放っておいて大丈夫?
スズメバチの活動時期と寿命
スズメバチが近くにいても、「放っておいたら自然にいなくならない?」、「本当に駆除しないといけないの?」と油断されてはいませんか?
ミツバチやアシナガバチなどよりも強く、針に猛毒を備えるスズメバチは、民家に巣を作ったり人を襲ったりと、毎年人々に恐怖を与えています。今回は、そんなスズメバチの活動、寿命とその一生をたどり、スズメバチの生態についてご紹介します。
季節によって変わる巣の危険性や、一つの巣がいつまであり続けるのかについても詳しく触れていきますので、スズメバチの被害が不安な方はここでご紹介する情報を参考に、ぜひ対策を施してみてください。
スズメバチの活動時期
今は大人しくても、その巣のハチはこれから狂暴になっていくかもしれません。まずは、スズメバチの一年間の活動と、その危険性をチェックしてみましょう。
■一年間の活動
春になり冬眠から目覚めた女王蜂は、花の蜜や樹液を舐めて越冬で失った体力を回復させると、単独で巣作りを開始します。この時期は、巣材や幼虫の餌の収集などの仕事も女王蜂が行いますが、6 月後半から働き蜂が羽化し始めると、これまでの仕事は全て任せるようになります。
女王蜂が産卵に集中するようになるため、巣は急速に拡大していき、7~ 9 月頃にはピークを迎えます。その頃のスズメバチの数は一つの巣で数百匹規模にまで上り、また子育てのために気が荒くなっており、非常に攻撃的です。なお、この時期には元の巣が手狭になり、より広い場所を求めて引っ越しを行う種類のハチも存在するので、今まで何も無かった場所に急に大きな巣ができたり、反対に今まで活動的だったはずのハチの巣が急に空っぽになるという現象が見られます。
秋にさしかかると、それまでメスの働き蜂だけだった集団の中にオス蜂を誕生させ始めます。9 ~ 11 月にかけてオス蜂が羽化すると、その1~2週間後には翌年の新女王蜂候補たちが羽化していきます。そして、新女王蜂候補が数日間に渡り栄養を十分に摂取すると、オス蜂の群れを引き連れて一斉に巣から飛び立っていき、元の巣に戻ってくることはありません。新女王蜂候補とオス蜂はそれぞれ別の巣から飛び立った蜂と交尾をするため空中を飛び回り、無事に交尾を終えた新女王蜂候補はそれぞれの越冬場所を探して冬眠に入ります。
■スズメバチが危険な時期
どの種類のスズメバチも、春先から冬の冬眠時期までを活動時期としています。そして気を付けなければいけないのが、夏の7月~9月頃です。数も格段に多くなっており、攻撃性もピークに達するこの時期は、プロであっても駆除が難しく、作業中ケガをしやすい最も危険な時期です。下手に刺激して刺されてしまうと、最悪命を落とすことにもなりかねませんので、絶対に浅い知識のままで駆除を行うのはやめておきましょう。
攻撃的で知られるスズメバチですが、実はこちらから危害を加えたり触ろうなどということがなければ、殆どの場合無闇に攻撃はしません。しかし、キイロスズメバチやオオスズメバチ等の一部の種は気性が荒く、巣に近づくだけで攻撃をしてくるので注意が必要です。 特にオオスズメバチは土の中に巣を作ることが多いため、 気付かない間にスズメバチの攻撃範囲に入ってしまい、事故に遭うというケースが多く見られます。
種類に限らず、人間がハチに刺される事故の多くは、無意識に餌場・巣に近づいてしまい、襲われるというケースです。巣の場所を知っていたり充分に気をつけていたとしても、防ぎようがない場合が殆どであるため、「よくハチを見かける」、「巣を発見した」という場合には早急に手を打つことをおすすめしています。
▼種類ごとの活動時期
スズメバチの種類 | 活動時期 | 特に危険な時期 |
---|---|---|
オオスズメバチ | 5~11月 | 8~10月 |
キイロスズメバチ | 5~11月 | 7~10月 |
ヒメスズメバチ | 5~9月 | 8~9月 |
コガタスズメバチ | 4~11月 | 7~10月 |
モンスズメバチ | 4~10月 | 7~8月 |
それぞれのスズメバチの生活と寿命
■働き蜂
巣の拡大や掃除、エサ集め、幼虫の育成、外敵の排除などを担当しているのが働き蜂で、群れの殆どはこの階級です。すべての働き蜂はメスのスズメバチであり、私たちにとって脅威である毒針をもっています。
4~5月頃から生まれ始める働き蜂は孵化してから1 カ月ほどで成虫になり、そこからの寿命は4~5週間程度と短命です。一個体が寿命を迎えても、世代交代をしながら徐々に数を増やし続けることで大群を維持しているのです。その数は8~10月にはピークに達しますが、越冬はできずにそのまま死滅してしまうため、働き蜂全体の寿命としては春先から冬までの一年間となります。
■女王蜂
女王蜂は巣で卵を生むのみで基本的に外に出てくることはありません。活動を開始する春頃には外を飛んでいる姿がありますが、この頃は冬眠から目覚めたばかりで非常に弱っており、あまり攻撃してくることはありません。
女王蜂は秋口の9~12月頃に、新女王蜂候補として生まれます。一つの巣から数十匹から数百匹以上が生まれ、11 ~12月にはそれぞれが巣立っていき、別の巣からきた多数のオス蜂と交尾をします。翌年卵を生み続けられるだけの精液をここで全て溜め込むと、朽木の中などを安息地として冬眠に入り、厳しい冬を生き抜きぬくのですが、春まで生き残るのはわずか10%と言われています。
生き残った女王バチは、春になり気候が暖かくなると冬眠から目覚めて、巣作りのため働き始めます。その後は卵を生み続け、生まれてから丁度1 年経つころになると、ほとんどの場合は次の女王蜂候補が巣立つ前に寿命を迎えます。
■オス蜂
オス蜂は9~10月頃に生まれると、何をすることもなく巣の中を徘徊するのみで、働き蜂のように巣の拡張やエサの収集などをすることは一切ありません。また、針を持たず外敵を刺すことができないため、脅威は特にありません。
寿命は3~4か月と働き蜂に比べてかなり長い間生きられるのですが、交尾のため巣を飛び立つと、大半は天敵に捕食されるか力尽き、生き残った一部のオスも、新女王蜂との交尾を終えるとそのまま死んでしまいます。そのためオス蜂は、スズメバチの中でも短命な階級と言えます。
まとめ
個体により生まれる時期は異なりますが、基本的に一つの巣の寿命は一年であり、冬になると一生を終え空っぽになります。しかし巣をそのまま放っておくと、次の世代のハチに再利用されてしまうこともあるため、春になるまでには取り除いておくようにしてください。
まれに、1 月頃まで生き残っているハチが巣の中にいたり、新女王蜂が巣内で越冬することもあるため注意が必要です。ご自分でできそうな場合には剪定ばさみを使って切り落とし、取り除くのがむずかしい場合には、業者に依頼することも可能です。